2022秋づく!フットパス高千穂・下川登コース報告

投稿日:2022年11月7日 更新日:

高千穂・下川登コース

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世界農業遺産(GHIAS)5町村の中心でもあり日本屈指の観光地のひとつである高千穂町の下川登地区です。
本コースは前半を、境内全体が神話発祥の高天原であるくしふる神社の境内や周辺および御神体を、後半をそのお膝元ともいうべき下川登集落を巡る流れとなっています。
下川登集落は、場所としては国道218号にかかる雲海橋と角にファミレスのある馬門(まかど)交差点から、高千穂中心街に伸びる県道50号とに挟まれたエリア一帯、東斜面に築かれた集落。
江戸時代は集落の中を日向往還が貫いたという交通の要所。また、10月下旬から11月にかけてこの時期、朝昼の寒暖差が大きな好天であれば集落のどこからでも見事な雲海が見えることは、高千穂通の間にはつとに知られてもいます。残念ながらイベント開催日、雲海はかなわなかったものの、代わりに澄み渡る秋空を拝むことができました。また、気温もみるみる上昇し、途中からは半袖でも汗をかくほどした。
高千穂町体育館前駐車場が出発地点。案内人は下川登集落の生まれ育ち、以前は高千穂観光協会の理事もされてらっしゃった佐藤英記さん。
くしふる神社の大きな鳥居に一礼、拝殿には向かわず狭い生活道を行き、昔の面影に戻しつつある川のほとりにある「夜泣き石」を見つつ天の真名井へ。 種類の異なる古巨木の密集地でもあり、推定樹齢1,300年とされる3本のケヤキと、瓊瓊杵命(ニニギノミコト)にちなんだ湧水所、その澄んだ水『天の真名井』の聖なる湧水に参加者全員で手を合わせました。
紅葉が美しい橋を戻り階段を昇り集落を抜け、くしふる神社の境内へ。立派な杉の樹木がそびえ立ち、御神木然としているのですが、ここは先述のように一帯の山そのものが御神体であり、立ち入り禁止ともなっている神聖な敷地。
しかしながら佐藤さんの子供のころは、
「畏れ多いとか親から言われても当時はぴんとこないから、走り回って遊んだりしましたね」
とのことでもあったそうです。そう言われたものの昇り階段からすでに、神武天皇につながる歴代の神々が織りなしている厳かな空気が静かに漂っていました。木々の隙間から差し込む光すら神々しかったことを感じ取ったようでした。
本殿に彫られた昇り龍・下り龍などの由来や説明を聞きつつ、そんな御神体の間に伸びる旧日向往還の道で見つけた、巨石にまたがったりや独特な枝ぶりの杉の大木群を鑑賞。生命力と神聖なる地であるという認識を一同強く持ちました。仮に同じ光景が他の地で見られたとしても、本コースほどの神聖は覚えないだろうことから、誰もが「高天原を歩いている」意識を、極めて自然に神話の世界と醸成させられる、非常に稀な、唯一無二なコースだろうと改めて感じさせられるには十分であったでしょう。時々に、そんな厳かさを求めてなのか、観光の中心地から足を伸ばして高天原をおとずれた訪問者と行き交ったりしました。
続く風土記・万葉の丘は、かつて県内でどこが本当の天孫降臨の地かという論争が巻き起こった際、日本の有力者たちがこぞって高千穂町こそがという賛同を集め、その名を昭和41年に石碑に刻み、一つの証明書として建立・設置して今に至る場。裏に回ると金田一春彦や武者小路実篤ほか有名人・著名人の名前がずらずら列記されているのも圧巻です。
御神体最後は、コース上で最もパワースポット的色合いが強いとされる高天原遥拝所と、神武天皇をはじめ4人の皇子兄弟が生まれたとされる四皇子峯参拝所。ここは特に立入が禁止されている場所であり、佐藤さんもさすがにここに足を踏み入れたことはないそうです。
さて県道を渡ると、コース名にもなっている下川登集落へ。GHIAS認定を受ける一因となった山腹用水路は塞がれて、葛根迫(かねざこ)稲荷から水神様に続く散策路となっています。散策路に沿っての県道は、車の往来が多く、また地元の人々の信仰と憩いの場でもある。県道からは集落だけでなく、遠く雲海橋や、現役時代は東洋一の高さと謳われた高千穂鉄道の鉄橋、背後の山々が一望できることもあり、参加者らの撮影大会で足取りが止まるほどでした。
ここから、地元の人の案内ならではの生活道に。個人の庭を横切らせてもらったり、普通なら絶対に歩かない畦道を通らせてもらうなどしながら歩みを進めます。棚田と棚田の合間に建つ家々の佇まいは美しく、生垣や庭先の手入れが行き届いており、太陽と愛情に満ちた生活ぶりが手に取るようでした。挨拶には笑顔で応じてくださり、気持ちを和ませていただいたものです。
稲刈りのすっかり終わった棚田の畦道を歩き降って、立ち寄ったのは背鷹(はいたか)天神。目の神様が祀られているそうで、背丈のあるのっぽの鳥居が特徴的。夜神楽の時にしかお披露目されない神々のお面を、高千穂では「おもて様」と呼びますが、そのおもて様が扉の向こうに鎮座されております。
三差路に立つ大きな庚申塚を見て、今回の道順では最後の逢初(あいぞめ)天神へ。瓊瓊杵命(ににぎのみこと)と木花佐久夜毘売(このはなさくやひめ)が祀られた、縁結びと子宝の小さく可愛らしい社、そして湧き水が新田よろししく鎮座していた。境内には「三田井」の地名由来となった「あいそめ川」。
また、高千穂鉄道や雲海橋を見下ろせる絶景スポットにはベンチが設置されていた。
「今年は3年ぶりに集落の夜神楽が復活します。12月3日にお迎えに上がり、公民館の神庭(こうにわ) にお連れし、神事の後で夜神楽33番を、翌朝10時過ぎまで奉納します。私もほしゃの一員として、舞わせていただきます」
そのように仰る佐藤さんの表情からは、神様と共生する高千穂に生きる独特な意思を感じさせられた。
お食事は農家民泊「チャコの山村物語」を営まれている橋本憲史さんの自宅で。下川登は住民の結束が強いことでも知られているが、そんな団結力が御膳にも如実にあらわれていました。
普段ならよほどの催事か、あるいは高級レストランでしかお目にかかれないような「高千穂のかっぽ料理」は、高千穂を代表する「食の芸術」である。そして、本フットパスの魅力の大きなハイライトの一つでもある。
参加者の口から、見た瞬間に「うわぁ〜」という歓声が上がるのも頷けるというものです。
竹の風味を最大限に活かすため、参加者が食べる時間から逆算しての前日の竹切りと寝かせ、器も竹の節を巧みに使ったもの。炭火で炊いた絶妙なかしわ飯に、鶏とニラ、しいたけのかっぽ煮込み、それらを主役に立てた酢ものなど、どれを取っても超越一級品。デザートの、なんと小松菜を練り込んだシフォンケーキも素晴らしかった。
準備に大変な時間と労力を注がれたことは容易に想像がつくにもかかわらず、そんなそぶりを微塵も見せない橋本さん夫妻とお仲間の心からの歓待に、誰もが胸を強く打たれました。
最後に高千穂の絶景を臨む芝生のテラスで集合写真を撮り、笑顔の解散となった。

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